「生命記号論」は、記号過程としての生命を記述する。つまり、因果関係の二項論理ではなく、パースの三項論理を生命活動にも見出し、生命とは記号過程であるという。個体発生を例にとろう。DNAは受動的存在であり、それだけでは個体発生は起こりえない。受精卵によって解釈されてはじめて、DNAは意味を帯び、生体が形成されていく。その解釈のプロセスで、外部観察者からみれば、エラーが起きることもある。生命は非規定的な記号過程であり、因果律のみで記述できないのだ。
生命記号論は、基礎情報学が参照する理論の1つである。というのも、基礎情報学は「生命と情報(生命記号)」から出発するからだ。だが、生命記号論は荒削りであり、さらに、このままでは生命から社会までを把握する理論へ到達することは難しい。それを補完するために、オートポイエーシス理論やメディオロジーを参照しながら、西垣研究室は「基礎情報学」の構築を目指している。(文:河島茂生)